栗農家が栗を新たに植えて育てようと思った時には、まず品種を何にするか、その次にどの位の間隔で何本植えるか、が決めなきゃいけないコトになります。
まずはじめに「決まりきった間隔はなく好きに植えて良い」のが大前提であることを宣言しておきます。そのうえで自分なりに栗農家が栗新植する際には、何m間隔がオススメかを考えてみたいと思います。
いきなり結論ですが、
「7mまたは8m間隔 (あるいは10m)が絶対オススメ。さらに土地に余裕のある大規模圃場では「8×10m間隔」です。
私自身も、圃場にとって3.5m、4m、5m、7m、8mといろんな間隔で植えて試行錯誤してきました。その結果7m以上が良いと確信を持って言えます!
<理由>
その1 トータル本数が少ない方が、濃密な管理をしやすい。
とっても枯れやすい西日本で栗を枯れないように育てようとすると、愛情たっぷりの濃密な管理が要求されるので、本数が少ない方がいい。400本を手入れするより100本を手入れする方が手堅いです。一般的印象に反して、西日本では栗はほったらかしでは決して育ちません。
その2 間伐を前提に植えても、栗はよく枯れるので、ほとんどの農家が間伐は勿体無くてできません。よって間伐は不要のプランで。初期収量はちょっと少なめでも気にしない。
その3 成木での単位面積あたり収量は密植か疎植か、で大きく変わらない。それなら初めから少ない本数がいい。(追記。この点については筑波のように若い時から豊産性の品種であれば、やはり密植に分があります。)
その4 当地では丹波栗成木は半径3m程度の低樹高仕立てにする人が多いです。ということは適切な枝間の1mを加えると3+1+3=7m、
これが成園で日照が確保される最低限の間隔。
4mや5m間隔では半分間伐しても一方向の枝が重なり病害が増えやすい。大規模圃場でスイスイ作業車走らせて管理を容易にするなら8×10mが理想です。
その5 新植する際の費用が安い。手間も圧倒的に少ないです。
その6 細根の発達した優良栗苗を密植に十分な本数を確保することが困難。
その7 栗は溜り水を極端に嫌います。それゆえ、排水溝を切る必要がある事も多い。ところが7mよりも近いと溝切りで根を切って痛めてしまう恐れがあり、間隔の広い方が排水管理に良いです。
その8 幼木の栗よりも成木の栗の方が大きく立派で旨い。幼木期の収量には経済的価値が薄いです。(筑波は例外的)
※ちなみに、アメリカにthe Chestnut Forumというオンラインフォーラムのページがあり、同じく栗栽培マニアが熱く語りあいます。そこでは、7.5m、いや9mにしとけば良かった、6mで植えたけど75%を切ることになったから12m間隔が一番収量がいい、といった議論がされています。確かに合衆国くらい土地に余裕があれば最適値は12m間隔でしょうね。そのあたり更に見たい方は
http://www.chestnutsonline.com/forum
のTree spacingというスレッドで見られます。
(2019年追記、昨年、今年と台風被害が続く気候になってきますと、3 x 7mとかの密植・低樹高栽培で風害を避けることも有効な対策として意識しておかなくてはならないでしょう。)
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