美玖里の剪定 

丹波栗 栽培日記
美玖里は、まだ農研機構の先生方による育成から10年弱ということで、これまで剪定方法はまだ十分に議論されてきていません。

平成29年5月に熊本県球磨農業研究所重本さんによる発表が、公的研究発表の唯一のものですので、これも大いに参考とさせていただいて私見を書いてみました。

1  結果母枝には、結果しやすい前年結果枝を優先利用する。
2  1メートル前後の徒長枝もよく結果する。短い前年非結果枝には結果枝が出にくい。
3  従って、結果母枝には、前年結果枝:長い徒長枝を7:3を目安にする。
4  夏以降に二次伸長枝した二次伸長枝もよく結果するので、できるだけ残す。
5  幼木時は先端に結果する傾向が強いので、あまり低樹高にしようとすると、初期収量が少なくなる。
4  枝が少ないので、若年樹は自然にクリスマスツリー形に仕立て、密植としても、受光条件上問題ない。
5 しかし、そもそも結果母枝候補となる枝の数がもとより少ないので(銀寄の半分くらいか)、前年非結果の細い枝を中心に少し透かす程度の剪定とする。
6  台風害には少し弱いので、6年目位までの幼木は5月下旬に結果母枝先端15cmを切り戻して骨格を引き締める。多分これ大事。冬剪定での切り戻しでもいいかもしれませんが、凍霜害による枯死防止に切り戻しについては晩春の追加調整剪定がベター。
7 充分に結果するようになった6年目以降に、適度にシンプルな樹高制限。ただし、美玖里は利平の曽孫で、中国グリ系の遺伝子が1/16入っていますので、直立性の性質を素直に利用した樹形が適しています。

管理があまり複雑過ぎない(時間がかかり過ぎない)ことは、労働生産性が極めて低いクリ栽培(全ての果樹栽培のうちで断トツ最低と言われる)では重要です。長い徒長枝にも良く成る、ということは、最終的には岐阜県方式の超低樹高の徒長枝利用が適しているかもしれません(未検証)。美玖里は筑波の孫ですから、同様の剪定が通用する可能性が十分ありますね。

あまり良くない例で、晩春の切り戻し剪定をしていない新植後4年目の美玖里の樹で、昨年の台風で折れてしまった様子です。しかし一方で、外形が扇形で、おそらく兵庫方式を見慣れた方々にとっては、形は美しく映らないないものの、よく見ると意外に良く成っていて、収量も悪くありません。

幼木時の晩春の樹勢調節的切り戻し剪定でもう少し骨格を引き締めておけば、こういう台風害も起きにくくより良く成るでしょう。

(熊本県球磨農業研究所の研究員の方々には精力的な情報発信を頂きまして、大変参考になります。ここに感謝申し上げます。)


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