栗の品種 その9 石鎚 Ishizuchi

丹波栗 栽培日記
引き続き日本グリの品種紹介シリーズ。そろそろ品種紹介は最終回に近いです。
こんにちは、石鎚です。
別名、くり農林4号、い-5。

岸根と笠原早生の交配で、1948年に育成されました。国の研究機関である旧園芸試験場(今の農研機構にあたる)が、戦後のまだ平塚にあった時代にされたお仕事です。

果実は20g台の中型かやや小さめですが、受粉樹の配置を抑えることで、ふたつグリやひとつグリにすると大粒化します。加工特性では、渋皮煮むきの品種と言われます。

明るい外観が特徴的な晩生の代表品種です。現在の農研機構における各種クリ新品種育成の核になっている品種です。国見、紫峰、美玖里の親であり、ぽろたん、ぽろすけの曽祖父か母、と言えば、いかに農研機構におけるクリ育種の柱になっているかが解る方には解って貰えると思います。

栽培上の長所ですが、「クリタマバチ抵抗性」と合わせて、「イガが枝と密着していて風害で落ちにくい」ことが最大の特徴のひとつです。今年の台風連続で改めて実感されたことですが、強風でもイガはビクともせず引っ付いています。台風の多い日本ではこの形質がクリの品種育成にとても重要なのです。

栽培上の短所としては、樹勢は弱く、土壌を選ぶかなぁということと、年によってあまり成らない年があるように思われること、果実の大小の差が大きいこと等です。

またクリで国内で唯一、GI geographical indications 地理的表示を取得されている茨城県の飯沼栗さんは、この石鎚を受粉樹の数や種類をコントロールすることでイガに実1つの「ひとつグリ」となりやすようにして大粒の石鎚を地域ブランド化されています(あくまで参考・要確認情報です)。

ちなみに名前は普及の期待された愛媛県の石鎚山にちなんで命名されたものだそうです。その名前に反して、西日本ではそれほど普及しておらず、茨城県での栽培が多いように思われます。西日本の花崗岩風化土壌よりは、関東の火山灰土の方が合っているのかもしれません。

なお、今年のような暖冬に遅霜、5月猛暑、長梅雨7月日照不足の天候では、早生がまったく不作でしたが、晩生の品種は健闘して平年並みかやや良でした。

このように早生と晩生の品種では作柄が正反対ということも起きるので、栗栽培における品種の配分の参考になさってくださいませ。初モノ好きのせっかちな現代日本人は栗を9月初めからのものと思っていますが、ヨーロッパは10月半ばから11月が旬と捉えていることが多いようです。

晩生が落ちるこの10月中旬以降の方が、早生も熟成されて味が乗っていて、ほんとうに美味しい季節なので、栗を食べるグルメの面では是非初モノだけを珍重する文化をなんとか“10月中旬以降がクリの旬”という方向性に変えたいと思っています!



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