クリタマバチのこと

クリタマバチ成虫が虫えいから脱出してくる季節となりました。

これまでクリタマバチについて触れるのを、本ブログでは避けてきました。それは、地域、圃場によって影響が異なり、状況が込み入った話になるのと、現在のところ手堅い対策は、「抵抗性品種を植えましょう。」はい終了、だからです。

抵抗性は強い方から、国見、有磨、紫峰、石鎚、岸根>銀寄、大峰、秋峰>丹沢、筑波、伊吹、利平、美玖里(推定)>>多くの在来種、実生の栗や柴栗、です。

(栗栽培しておられない方には、なんのこっちゃら?の内容ですので、スルーして下さいませ)

抵抗性品種を選択する以外の対策には
「6月下旬のクリタマバチ産卵時期になったら産卵を防止するためにアディオンなどの合ピレ(合成ピレスロイド)散布しましょう。」
「それでも出てくるクリタマバチの虫えいには、天敵のチュウゴクオナガコバチが放たれすでに各地の自然に存在するのでそのうち彼らがなんとかしてくれますよ〜。」
「天敵のチュウゴクオナガコバチはクリタマバチの虫えいに4月〜5月に産卵して幼虫からサナギでそのまま年を越すので、チュウゴクオナガコバチのサナギを含む黒っぽく固くなった虫えいの付いた剪定枝は春まで圃場に置いておいてチュウゴクオナガコバチの成虫が脱出した5月下旬に処分しましょう。」
んー、現実的に合ピレ散布以外は Let it be なるようになるさって感じですよね。

クリタマバチの幼虫やサナギは虫えいの厚い殻に守られていて農薬も効かず、虫えいを出た成虫に狙いをつけた農薬散布のみ(ちょうど今頃からしばらくの時季)が有効という訳です。

天敵益虫であるチュウゴクオナガコバチによるクリタマバチ制御は日本で大成功を収めたとされます。しかし、クリタマバチが減るとチュウゴクオナガコバチも減ってしまい、効果が薄れることもあり、さらにこうした寄生ハチの関係性は国や地域によって大きく異なり、ややこしいことにもうひとつ高次の寄生ハチまでいたりして、年によって地域によって周期的にクリタマバチ被害が増減するのが現実です。

クリタマバチが栗栽培にとって最重要の害虫の1つであることに疑いはありません。しかし、その対策は現在ある程度確立した反面、筑波、利平、美玖里のように若干の感受性のある品種では撲滅するような完全な対策は無理とは言わないまでも、なかなか困難なのです。適切に他の害虫対策と剪定をして、全体の樹勢を保つのが最良の対応のひとつだと思われます。

ちなみに余談ですが、ヨーロッパでもクリタマバチ被害が近年急拡大しており、日本の研究者の方々が指導、尽力されて、かつて日本で採られたのと同様の対応がされるようになってきています。


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