一人当たりの果実供給数量は、2000年前後にピークを迎えた後、現在は1990年の水準と同水準にあり、巨視的にザックリと見ると横ばいだと言えます。
国内生産の減少分を埋めているのは、海外からの輸入果実です。ただ、この20年は輸入は全体としてはあまり増えていません。日本社会は高齢化に伴って、総体として食べ物をあまり沢山は食べなくなってきているのだと見られます。
一方で中華人民共和国に目を向けてみると、驚くべき変化が見られます。同じ30年間で果樹生産量は「約20倍」、果樹栽培面積は「約4倍」となっています。生産量の増加が面積の増加を大きく上回ることから、規模拡大とともに生産技術の飛躍的向上を伴った結果だと言えます。
中国のリンゴ。 リンゴはジョージアからロシア南部のコーカサス地方が原産地と見られています。現在のリンゴ品種はヨーロッパ、イギリス、アメリカ合衆国等を経て品種改良されてきた歴史があります。
モモ。 多様な種類があります。紅いものが好まれる傾向。モモは中国黄河上流域が原産地。
モモ。 多様な種類があります。紅いものが好まれる傾向。モモは中国黄河上流域が原産地。
ナツメ。原産地は西南アジアか南ヨーロッパと言われます。
栗生産について見てみると、1990年115,000tから2016年1,880,000tと、他の果樹と同様に「約16倍」と爆発的増加が見られます。日本で天津甘栗の産地としてよく知られている河北省は中国国内では意外にも4番手で、山東省を筆頭に、河南省、湖北省、河北省、安徽省が100,000t超、福建省、遼寧省、浙江省、広西壮族自治区、湖南省が50,000t超と、1つの省だけで他国の一国の生産量を凌駕する驚異のクリ生産を達成しています。コンビニと100円ショップのむき甘栗はこうしたクリ生産のお陰の産物です。
一方で、むきグリを除くと中国から日本への果実輸入量自体はそれ程増大していないので、こうした中国での果実生産の急増・激動の実情を知らない日本の方々が大半です。昨今の種苗法の問題の側面から問題提起がされて少し話をお聞きになられたことがあっても、この程までに大きな変化が起きてきたとは思ってもみなかったでしょう。何しろ、1980年代までは日本のクリ生産の指導者が少なからぬ数、中国へ指導に行っておられたのですから、誰がこれ程までの変化を想像を出来たでしょうか。ただ果樹の歴史は世界における人類の交易の歴史でもあり、常にダイナミックに変化し続けてきたとも言えます。(ここでは歴史的視点にとどめ、知的財産権の話題は触れずにおきます)
ごく最近になってこの5年ほど、日本の果樹輸出拡大の努力が特に力を入れてなされるようになってきました。そうした中において、中国において生産される果実の品質は30年前と比較して飛躍的に向上していること、価格は総体的に見て日本の4分の1以下、時に10分の1以下でその供給力は莫大であること、の2つを知ることは、これらと競合しない果実ブランド構築のために必要と考えられます。
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