立ち枯れ予防に亜リン酸カリウム液肥散布検討を(丹波栗栽培hints#3)

丹波栗 栽培日記
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写真は今年春の接ぎ木の状況。穂木から新梢が伸びています。やや徒長でしょうか。
 
今回も丹波栗栽培上のまったくマニアックなネタで、すみません。栗の立ち枯れ対処に亜リン酸液肥の散布を検討を、という話です。(あくまで適用、適正使用は栽培家の総合判断でどうぞ)
 
栗立枯れにシナモン疫病菌(Phytophthora cinnamomi ファイトフトラ)が関わることがあることが知られています。しかし日本グリはファイトフトラに抵抗性を有することが多いと従来考えられていることと、凍霜害以外の立ち枯れの原因はよく研究されていないことから、ファイトフトラ対策の情報は不足しがちです。
 
この理由は、おそらく栗の立ち枯れが日本の主力産地である茨城を主とした東日本や熊本のような火山灰土壌では比較的少なく、日本における数少ない公的果樹研究機関である農研機構が茨城に所在することが大きいと見られます。前にアップした様なファイトフトラ感染を疑うケースがあっても現状丹波栗栽培農家はまったくお手上げです。そこで、他の国や他の作物に解決のヒントを探ります。
 

まず他の国ですが、栗栽培におけるシナモン疫病菌 (Phytophthora cinnamomi) についてはアメリカでJoe Jamesさんという方とClemson Universityが精力的な研究をされています。そこではシナモン疫病菌対策として亜リン酸カリウム(日本ではホストップ、ホスプラスなど)やホセチルアルミニウム(同じくアリエッティ水和剤)が記載されています。

 
アメリカのジャーナルJournal of the American Chestnut Foundation のファイトフトラ記事より
 
一方他の作物では、日本でも亜リン酸肥料が卵菌目による病害抑制効果を有することは10年ほど前から注目を浴びています。(2011タキイ最前線冬春号より)
(オーガニック・ランド株式会社資料より)
 
またごく身近なところで、丹波でも黒大豆の立枯性病害対策に亜リン酸液肥の葉面散布が推奨されています。
 
あくまで亜リン酸カリウムは肥料としての位置付けなので、法規上も農薬として使用するわけではありません(かなりややこしい話です)。リン酸肥料として生育を促すとともに病害に対する生理的抵抗性を高めてくれるという訳です。
 
一方、ホセチルアルミニウムは農薬として登録されており、カンキツやナシの疫病に適用ありです。現状クリの記載はないので使用できませんが、適用拡大が待たれます。
 
なお、栗立枯れに亜リン酸肥料が治療に確実に効くと判明している訳ではありません。ですので、栗立枯れに全く打つ手なしから一歩進んで、リスクの高い樹の予防を念頭に気候温暖化に対して何か打てる手の1つとして捉えるとよいと思います。


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