晩生の方が腐敗果が少ない

丹波栗 栽培日記
ここ数十年の温暖化傾向は、成熟期の8月・9月と冬の2月の温度上昇に、特にはっきり表れています。丹波での月平均気温が8月で27.5℃、9月で24.0℃とここ40年で4℃前後上昇しています。もともと銀寄や筑波は夜間気温が18℃になると収穫期を迎えるはずなのですが、近年では、9月にはこの温度帯まで夜間温度が下がらなくなってきました。
残暑酷暑の中、落果した早生の丹沢 悲しいかな、十分な張り、艶がありません。

晩生の方が腐敗果が少ないというのは、平成20年熊本県球磨農業研究所発表データです。

確かに私達の経験上もその通りで、温暖化で早生よりも晩生の方が収量・品質ともに安定しています。(もちろん大きな地域差、品種毎の差があり、必ずそうだと言い切れない部分はあります。岐阜県の「えな宝来」などは早生の期待の星ではありますが、如何せんPVPで県内配布限定にされているので、詳細不詳。)

日本人の初モノ志向に応えるため、栗農家は「早生にウエイトを置く」という温暖化に対し本来自然な形と違う農業を求められます。熊本県の方も、早生の栗の品質は温暖化の影響で平均的にはあまり良くないことは分かってるんだけど、初モノの方が市場優位性があるから一応生産、となるわけです。(熊本県の方々、悪意はありません、ごめんなさいね。)

そう、みなさん栗生産者は、温暖化の中、栽培が難しくなりゆく早生を一生懸命作って、何だか無理しちゃっているんですよね。

こうした現状を知らない行政、コンビニ業界、マスメディアや大手の製パン業者、製菓業界が毎年9月1日から「栗フェア」的なセールスを開始するのには、もういい加減にして下さいな、と心底閉口します。そうでなくとも難しい環境にある日本の栗農業をこれ以上まだ苦境に追い込みたいのかなって、。その時期の栗素材って、ほとんど、去年か一昨年製造のものしか使えませんから。しかも大半は輸入もの。そう、もうこれは、旬を無視した、外国を後押しする黒船です。この背景にはこの30年で急速に生産を拡大した中国グリパワーと1970年代から日本の栗食文化を支えてきた韓国グリの存在を見逃せません。

行政、コンビニ業界、製菓業界、メディアの方々へお願い。「栗フェア」をするのは、日本の主産地の夜間気温が少なくとも18℃に落ちてからにしてください!ʅ(◞‿◟)

美味しいものを美味しい旬に頂く、のが健全な食文化です。去年採ったものを、今が旬、とかおかしな事です。自然環境も刻一刻変化します。失われた日本人の繊細な美意識を再興しましょう。栗フェアは少なくとも9月下旬以降、できれば10月、11月でなくちゃ!日本の栗産地を応援する気持ちが少しでもお持ちならば、どうかよろしくお願いします!

こうした視点から、早生の品質低下傾向が見られる昨今、温暖産地では主力品種の晩生へのシフトも十分検討が必要になっています。



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